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Ririko Yamaguchi
着地点
Mくんは、小石を拾う
マンホールの蓋の 小さな穴に
入れなくてはならないから
Mくんは歩いているとき
5メートルに一度くらい立ち止まっては
小石を拾い、マンホールの穴に入れる
まるで儀式のように
4時すぎに福祉作業所を出て
そこから5時半に自宅へ着くまでの道程で
Mくんは、その儀式を粛々と遂行する
アスファルトの道で
目的にぴったりの小石をみつけるのは
案外、簡単なことではない
選ばれし小石たちの
空に、ほんの少し近づいた直後の暗転
わたしは、小石の行方をおもう
マンホールの中に
いつでも、確かに、底があると
誰が断言できるだろう
夕焼けが濃くなっていく
「Mくん、かえろう」
返事はない
自閉症のMくんの口から
言葉がでてくることは めったにない
暮れてゆくとき、色は駆け足だ
不意に、うつむいて歩くMくんが
空を見上げて言った
どんどんまっくら
どんどんまっくら
どんどんまっくら
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