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Ririko Yamaguchi
蜜月
浴槽で 湯に肉をあずける
血を、骨を、皮をあずけ
わたしたちは交わる
小さな丸い栓の決心
それだけが
おまえとわたしを留めている
こうしている間にも
わたしは剥がされ
追々もろとも
排水溝から流れてゆくというのに
ねえ、
おまえ忘れてしまったのか
知っているのに
知らないふりをしているのか
どちらにしたっって
そんなに透きとおって
ばかみたいに
なんにでも染まって
いつだったか 会ったじゃないか
遠い時代おまえは泉で
わたしは馬だった
あの時だって
初めてじゃあなかったのに
そんなに透きとおって
なんにも知らない顔をして
それでいて
わたしを奪えるだけ奪って
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