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こぼれてゆくもの

 

だれもいない浜辺で 砂をすくう

手のひらにおさまった砂を
一枚の紙にのせると
ささやかな ひとつの世界がうまれた

だけど
指と指の間からは
いつのまにか
たいせつな何かが逃げていってしまうから

手にいれたはずのものと
紙の上のちいさな世界には
無愛想なニアイコールの橋がかかる

こぼれていったものと…
いかなかったものと…

言葉と言葉の間の 白いすきまは
つかみそこねた何かが
座るはずだった空席

わたしの手から逃げていった何かは
今もまだ遠い浜辺で
風にふかれていることだろう

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