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Ririko Yamaguchi
木曜日
路地の向こうから
太った猫に手招きされた
さぼっちゃえよと
シッポまでもが誘ってくる
僕は路地に足をふみいれた
すこしだけぼんやりしたら
すぐに戻るつもりだった
あれはいつのことだったろう
たしか、はっきりしない曇り空の
木曜日だった
結局、そのまま路地にいて
路地から世界を眺めている
毛布のようになじんでいた日常は
手が届きそうで届かない
遠い景色になった
戻る方法を忘れたわけじゃない
それは
夜中に寝ぼけたままトイレにいくくらい
簡単なはずなのに
出しそびれている手紙のように
僕は
木曜日の路地の中にいる
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