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濡れた犬のためのパヴァーヌ

 

ずっと昔の雨の夜

田舎の列車が無人駅に止まると
のら犬が、ふらりと乗ってきた

そのまま列車は動き出し
犬の汚れた毛から
しずくが垂れていたのを覚えている

あれは現実のことだったろうか
いつか見た夢の光景だろうか

列車を思い出すたびに
濡れた犬はやってきて
発車のベルはなる

だけど
いつまでたっても次の駅には着かず
わたしも犬も 列車に揺られたまま
映像はとぎれてしまうのだ

どこかで今も
わたしが降りるはずの駅は
雨に濡れながら
待っていてくれる気がするから

何度だって
あの列車に乗ろうと思う
途方に暮れているかもしれない
濡れた犬のためにも

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