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さいごのめあて

        

      

「ろうかを思いきり走る」

 

いけないことなのは 

わかってるけどさ

 

ランドセルを もう持たない日

一番のりした学校の

まだ誰もいないろうかを

僕は走る

 

ようい どん!

 

朝の光を体中にあびて

はじめてのメートル走のように

どきどきしながら

 

走る はしる!

 

だれかに呼ばれたような気がして 

ふりかえると

黄色い帽子をかぶった一年生の僕が

ろうかのむこうから 

まぶしそうに手をふっている

 

ちいさな手だな

あの頃はいつだって

おおきな手にまもられていたんだ

 

手をつながなくなったかわりに

僕は 

僕の手を 

ぎゅっとこぶしにした

さあ 走るんだ

 

ろうかの先には

まだ入ったことのない教室が待っている

 

「未来」とだけ書かれた

その教室に向かって 僕は走る

 

僕だけの さいごのめあて

キャップ
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